
Nosotros ノスオトゥロス
Artist
Ando Hutaba
安藤 二葉
小さいころから絵を描くことが好きでした。中学生からずっと美術部だったので、美大に行きたかったのですが、両親から反対されて立教の仏文科に入りました。これを機に仏文学に専心して、絵は辞めるつもりでしたが、結局、美術部に入り、部室で絵を描くという日々を過ごしていました。ただ、高校生時代にテレビや新聞等でフィデル・カストロを見て、世の中には素敵な男がいるものだと感動して以降、ラテンアメリカが好きになり、大学のラテンアメリカ研究所の講座生となりました。その当時、ボリビアでチェ・ゲバラが捕えられて銃殺されたニュースには、強い衝撃を受けました。大学卒業後、先輩が日本美術家連盟の版画工房で銅版画を学んでいたのに触発され、私も夜間に工房に通いました。一九七二年に日本版画協会展、国画展などに入選し、CWAJ展では少しばかり注目されたこともありました。しかし中南米へ行きたいとの思いも捨てがたく、その翌年、中米への学生訪問使節団なる企画に入り込み、中米諸国を訪れることができました。その際、現地で美術を指導している青年海外協力隊の存在を知り、帰国後に試験を受け、青年海外協力隊として憧れのエルサルバドルへ赴任しました。しかし、現地で生活をし始めると、自分が実際には中南米について何も知らないということに改めて気付きました。それからはJICAのプロジェクトコーディネーターをしたり、JICAの研修生たちの付添をしたりして、コスタリカ、ボリビア、チリ、エクアドル等で業務調整員として働きながら、中南米諸国での見聞を重ね、自分なりに中南米の社会構造等を学びました。また、その頃も片手間でしたが、絵は描き続けていました。1974年から二年間、エルサルバドルの国立芸術高校の美術科で、銅版画とリトグラフ、木版やステンシル等の技法を教えました。ただ、一般的な美術教育のやり方ではなく、生徒に聞かれたことを中心話題として、芸術論を討論形式で話し合うという教え方をとっていました。学校ではとても才能のある生徒や受講生に恵まれ、満足して帰国したのですが、その翌年にエルサルバドルで反政府運動が起き、私が後継者として育てた元生徒が行方不明となってしまったんです。自分が二年間していたことは、何だったのか?と、頭を抱えて悩みました。当時エルサルバドルへは、JICAボランティアの派遣が中断されていました。そこで近隣のコスタリカに美術教育の指導をしに行き、その時の休暇を利用して、エルサルバドルにて元生徒の未亡人と会うことが出来ました。その時に、彼の息子が絵を描き始めたと教えてくれたんです。それを聞いて、自分にとって教えるということは人生のテーマではなかったけれども、こういう人生になり、自分に何が出来るかってことがテーマになったのだと改めて思いました。私の作品では、モチーフを鳥にすることは多いですけど、実は鳥は嫌いです。人間以上の存在感を出しながら人間達を見下ろす、あの小さくて表情が読み取れない目つきが嫌いなんです。畏怖や狡智なものを感じる反面、空を飛び自由なところは、単純に羨ましいという複雑な思いが鳥に対してはあります。でも、自分が一番思い入れをもっているのは窓からの、窓を通しての風景とか人間の有り様を描くことなんです。浮世絵みたいに人間模様を描くというのを本来は追求したいんですよ。海外で版画を指導して、日本の気候には木版画が一番適していると実感したので、木版画での制作が今はメインになりました。良い木と良い和紙、そして湿気がある日本で版画を、特に板木を彫っていると、何とも言えぬ充実感を覚えます。作品を通じて何かを伝えねばという時はあったけど、今はそういうことはないですね。好きだから、縁があったから続けられた。いいものを作りたいっていうだけです。自分が教えた人が続けているのに、自分がやめるわけにはいかないですしね。

1970年代
版画協会展、CWAJ展等に入選
1974-76
青年海外協力隊員としてエルサルバドル国立芸術高校で版画指導
1980年代
コスタリカで版画指導
1990年代
JICAプロジェクト調整員として、ボリビア、チリ、等に赴任
2012-14
JICAシニア・ボランティアとしてエクアドルに赴任。タグアを使っての作品制作
2017年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros1」
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros1 トークショー」
2018年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros2」
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros2 図録」
2019年
「ラテンアメリカ探訪公募展 Nosotros3」
「ラテンアメリカ探訪賞」受賞
2021年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros4」
2022年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros5 SOL」
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros5 LUNA」
2023年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros6 ラテンアメリカの壁」
2024年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros7」