
Nosotros ノスオトゥロス
Artist
Hijikata Yoshio
土方 美雄
アート作品をまさか自分が作るということになるとは、考えてもいませんでした。でも、老い先短いし、主催者特権で出展しているって思われてもいいやと思い、昨年も今年も、出展することにしてしまいました。ライターであれば、長年書いて来たから、自分の書いたものに対しての、それなりの自信もあるけれども、アート作品に関しては、好きなのと、つくるのとは、やはり、別次元ですから。昨年、展示した作品は、収集しているメキシコの骸骨人形を、「死者の日」の祭壇風に、並べてみました。メキシコの骸骨人形は、死に対して、開き直って笑っちゃえというのが、面白いんです。ヨーロッパの「死の舞踏」なんかは、死への恐怖心しか、ない。自分の築いてきたものが、すべてなくなるという恐怖心。でも、メキシコの骸骨人形や「死者の日」には、それを全部逆転させて、笑い飛ばしちゃうという面白さがある。もちろん、死への恐怖心は、メキシコの人もあるだろうし、自分にも、ありますよ。六七歳の人間が、ここ数年の間で何度も手術したりすると、やはり死っていうもの身近に考えます。若いころに考えていた、美化された死とイメージが違う、リアルな死を…ね。 作品制作に関しては、イメージが固まっていない状態の中、いくつかある構想を胸に、ぼろ市や骨董品店を回り、それにあったものを探すという感じです。逆に、面白い物があった場合は、それに合わせて、作品を作る場合もあります。何も考えていないようでも、結構、意味があって、配置しているんですよ。でも、それについて、来場したお客様に尋ねられた時、やっぱり、恥ずかしくて、話せなかったです。前回の作品は「死者の日」をイメージしたのでカラフルなものでしたが、元々は白とか黒といったモノトーンのダークな感じ、そして自己満足的な面白さじゃないものが、好きです。 アート作品に関しては、この作者がそれから長く、どういう作品を作っていくかというのを、見極めたいっていうのがあります。アーティストって、結局、何年かで行き詰まってやめてしまう人が多いですけれども、そういうのって、作品から透けて見えてしまうところがあって。だから技術云々以前に、この人の作品を、今後ずっと、見ていたいか、どうかというところが、判断の基準ですね。 文章もそうですが、意味なく難解なものって嫌いで、人の目を意識していない自己満足的なものはどうかと、思ってます。そういうイメージがあって、現代アートは最初は、嫌いでした。それが変わったきっかけが、高橋龍太郎さんという人のコレクションを上野の森美術館で、たまたま観てから。そこで観たものは難解ではなく、とても面白く、感情移入出来るものだったんです。でも、真逆に、自分のためだけに作っているアウトサイダーアートにも、自分は惹かれます。作者にとって生きるために絶対に必要なものを、死ぬまで描き続けるという凄み。そのように、ほぼ同時期に、高橋コレクションとアウトサイダーアートと出会い、それまでは古代美術しか観ていなかったのが、一気に現代アートまで、裾野が広がりました。 要は、おたくなんです。遺跡も、とにかく誰も行かない、ただの瓦礫の山でしかないものでも、見に行きたいんです。普通のライターだったら、映像になるかどうかを考えて、絶対、行かないですよ。見栄えのしない遺跡のことを書いて、写真を撮って、出版社に持ってったって、没にされちゃいますから。現代アートも、そうやって、あれもこれも観たいというふうに、おたく風に、視野が広がっていった。でもこんなこと言ってるけど、家で作品を制作中、娘には、終始、なに馬鹿なことやってるんだっていう目で、見られていました。著書も出る度に渡して、あとがきに娘への感謝のことばを書いてるけども、読んでる気配はまったくないし、まぁ、悲しいけれども、親子って、そんなもんです。


著書
「靖国神社」(社会評論社)
「京セラ その光と影」(れんが書房新社)
「検証国家儀礼」(戸村政博・野毛一起との共著 作品社)
「アンコールへの長い旅」(新評論)
「北のベトナム、南のチャンパ」(新評論)
「マヤ終焉」(新評論)
「写真でわかる謎への旅 メキシコ」(辻丸純一との共著 雷鳥社)
「ミステリー&ファンタジーツアー マヤ/アステカ」
「マヤ・アステカの神々」(以上 新紀元社)
「トッピング充実!メキシコ音楽タコス」(共著 中南米マガジン)
「アンコールに惹かれて」(社会評論社)
「エル・ミラドールへ、そのさらに彼方へ」(社会評論社)等。
2017年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros1」
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros1 トークショー」
2018年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros2」
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros2 図録」
2019年
「ラテンアメリカ探訪公募展 Nosotros3」
2021年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros4」
2022年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros5 SOL」
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros5 LUNA」
2023年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros6 ラテンアメリカの壁」
2024年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros7」
2025年
「ラテンアメリカ探訪アート展 Nosotros8」