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Nishimura Feliz
西村 FELIZ
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 自分が最初にメキシコへ渡ったのが、高校を卒業してお金を貯めた一年後の一九九五年でした。アテもツテもない中、取りあえずアパートを借りるべくメキシコシティの町を彷徨っていましたが、当時の語学力では現地の人と会話は殆ど成り立ちませんでした。そんな時、一人のストリートチルドレンに声をかけられました。警戒する反面、当時十二歳だったその子のスペイン語はとても聞き取りやすく、その子と仲良くなりました。そして「行くあてがないならうちにくればいい」と連れられていったのが、路上っ子仲間たちと巣を作っていたマンホールの中。自分にとって人生初のホームステイ先はマンホールでありました。彼らは自分達だけでたくましく生きるプロであったため、メキシコで生き抜く術というものを彼らから色々と学びました。  徐々に言葉にも慣れ、生活範囲が広がってきてからは、大学で考古学を学んだり、信仰心もないのに洗礼を受けさせられたり、地下鉄で強盗に首絞められたり、美術学校で絵や工芸を学んだり、信頼してた友人の甥っ子に大金を盗まれたり、バスジャックに遭ってナイフで刺されたり、各地の遺跡を見に行ったり、空手が出来ないのに悪徳警官の息子に空手を教えたり、車に撥ねられたり、カテドラルの地下で遺跡発掘の仕事をしたり、泥酔の果てにタトゥーを彫られたり、自転車走行時に速度違反で警察官に逮捕されたり、土産物屋の工房で人形の作り方を学んだり、昼は銀細工師でも夜は泥棒というおじさんの助手をしたり、麻薬中毒者にリンチされ大怪我を負ったり、仲間と共にデモに参加して武装警官に警棒で殴られまくったり、友人とサウナに行ったら全裸で告白され膨張したアレを見せつけられたりと、今の自分を形成している土台のような様々な経験を積まさせてもらいました。  そんな数々の経験の中でも一番面白かったのが人形造りだったので、帰国後にパジコという粘土メーカーが経営している人形創作学院にて改めて基礎から学びました。上達するにつれ、メキシコで見知った文化や経験を作品造りに投影していきましたが、親が死に家族との縁が消失したのをこれ幸いとして、人形のアイディアを調達するべく三カ月の予定で、再びメキシコへと渡りました。しかし、各地の面白いものに惹かれるままに横道にそれ、結局そのまま中南米を一周し、帰国したのは二年後でありました。その際には、各地の遺跡を見に行ったり、肺炎を起こし三週間寝たきりになったり、陶芸を習ったり、アマゾン川で底なし沼にはまったり、様々な昆虫の調理法を学んだり、大雨で増水した川に流されたり、吹き矢で獲った猿をもいで皆で食べたり、薬物中毒らしきフランス人と骨が砕け合うほど殴り合ったり、砂漠で迷子になり帰れなくなったり、各地で固有の酒に舌鼓を打ったり、山犬の集団に教われて狂犬病発症の恐怖に震えたり、昼間から酒を飲んでいる駄目おじさんと意気投合し彼の娘とそのまま結婚させられそうになったり、太平洋のど真ん中でフィンしか付けていない状況で船に置いてけぼりにされたり、遺跡の泉で泳いでいた時にひょっこり現れたおじさんに自分の脱ぎたての下着を売ってくれと言われたり、ゲリラ組織に誘拐されたり、などする中で、各地で民族の文化に触れ合い帰国しました。  その後は縁と運とに恵まれたお陰で、人形作りやそれを教えることを生業にし、今に至ります。そもそも人形は日本では立ち位置が明確ではない存在です。アートに寄ると「工芸品はこっちくるな」と言われ、それではと民芸に寄れば「あんたは玩具でしょ?」等と言われがちです。逆に言えば立ち位置の種類が多いとも言え、日本では人形というものは人々に受け入れられ易い存在だと思います。日本もラテンの世界でもそうですが、いにしえの時より人は生き物の形を立体にして作り遺しています。子供の手慰みから、祭礼や儀式のため、等とその目的や用途は様々ですが、生き物の形に命を感じ、慈しみ、思いを馳せるというのはきっと普遍の本能なんだと思います。と、偉そうなことを言って生きていられるのも、ラテン各国で経験した全ての出来事が自分の血肉になった結果なのだと、粘土を捏ねながら思うこの頃です。

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1995 メキシコ居住

2001 中南米放浪

2003〜05 個展(表参道プロモアルテギャラリー)

2013〜17 それからの人形たち展(NHKふれあいホール) 2014〜毎年 みそろぎ展 (丸善丸の内OAZO)

2015〜毎年 個展 (六本木ストライプハウスギャラリー)

2017〜19 NOSOTROS展(NHKふれあいホール) 2021〜毎年 NOSOTROS 展(JICA横浜)

2024 ConiX展 (横浜人形の家)  他、グループ展等多数

海外

2009 Doll Art Festival(UAE Dubai)

2010 Art of Doll Vol.1(RUSSIA Moscow)

2012 In Dolls(Spain Costabrava)

          URAL DOLL FESTIVAL(RUSSIA Ekaterinburg) 2013 OMNI DOLL EVENT(MEXICO Cancun)

2015 Árbol de la vida(MEXICO DF)

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